秋は東洋医学的には収斂(しゅうれん)作用が強まる季節
収斂作用(しゅうれんさよう)、普段は耳慣れない言葉だと思います。収斂の意味は、水分などが抜けて縮んでいく植物などを連想していただけるといいかと思います。例、血管が収斂する。→血管が引き締まって縮むと理解していいと思います。
さて本題に戻りますが、東洋思想的に秋はこの収斂作用が強くなる季節です。ですので自然界ではいろいろなものが実をなし、枯れる方向へその生の営みをシフトしていきます。
この作用が我々に影響をもたらす時に、乾燥と冷えから肺と肌によくその影響が出てきます。
そんな時には蓮根を食すといいと薬膳的には考えます。他にも里芋などおススメ食材は在りますが、今回は蓮根のしぼり汁を紹介したいと思います。
蓮根のしぼり汁について
では、早速作ってみます。
準備するもの
👆1.生の蓮根、写真の右は皮を剥いた蓮根
蓮根は、蓮(ハス)の地下茎(根ではなく茎)が肥大化したもので泥の中に埋まっているため、そのままでは少し泥臭い臭いがするものもあるので水洗いをします。それから蓮根の皮を剥いていきます。
※蓮根は、皮が硬くてリンゴや柿のようにスルスルとはいかず、包丁では剥きにくいので、ジャガイモを剥く時みたいに、ピーラーで剥くと剥きやすいです。
👆2.おろし金、3.容器(お皿)
写真のようにおろし金は、金属製とプラスチック製、陶器製の3種類がありますが基本的にどちらでも構いません。違いは金属製の方が早くおろせて扱いが楽です。
一方、陶器製は擦り下ろしは、少しコツと力加減がいりますが慣れるとこちらの方が楽です。また、酸化しづらく擦り下ろした断面組織が自然なため味が美味しいです。プラスチック製は、金属製や陶器製と比べたら擦り下ろしにくかったです。
👆陶器製とプラスチック製の両方を比べてみた
陶器製は断面が滑らかで、プラスチック製は断面が鋭く、陶器製の方が味が良い感じがしました。
また容器は擦り下ろした蓮根が入るくらいでOKです。写真は濾し袋ついていますが、これはお好みで、あっても無くてもいいです。濾し袋があると搾りカスと液体が分離されて飲みやすいです。濾し袋が無い方は、蓮根の栄養を丸ごといただくつもりで筆者は、こちらを選択しています。
👆写真は濾し袋を使わず蓮根を擦り下ろして水を加えてみた
ちょっと飲みやすくする為に水を加えてみました。濾し袋で濾した場合は、水を加えなくてもそのままでOKです。
飲むとちょっとした甘さがあり、ジャガイモのようなデンプン質の味がしました。
大根おろしの様な感覚ですぐに作れる
蓮根の皮をむいておろし金ですりおろします。そしてそれを器に濾して、杯いっぱい分を飲むだけです。すると蓮根の働きで気管支や喉の炎症や乾燥が改善されていくようです。この作用を利用する事で、民間療法として古くから活用されてきた養生法です。
自然療法の大家である東条百合子先生も、その著書で紹介しています。筆者の経験からいうと、悪くなる(喉の炎症が酷く、咳や喉が痛む)前に転ばぬ先の杖としておこなうべき手当法だと思います。
東洋の薬膳的には、蓮根料理を食べるだけでも呼吸器系に効果が期待できます。
天気予報で今年は、季節の移り変わりが緩やかであると紹介されていました。そんな時は寒暖差から身体が疲れやすく、風邪もひきやすくなります。未病治とまでは言いませんが、秋の養生法として活用してみてはいかがでしょうか。
ちなみにお味は結構甘めで美味しいです。杯いっぱいと言わずに、湯呑いっぱいでも飲めそうだと筆者は思います。
同じ要領でもう一工夫(蓮根湯)
風邪ひいたときや気管支の調子が機になる時に、蓮根湯を作ってみてはどうでしょうか。
蓮根の成分が粘膜の保護の役割をして喉の乾燥や咳などに良いといわれており、こちらの蓮根湯は煮ているので、先述した蓮根の絞り汁は生なので飲みづらいと思われる方は、こちらを試してみてはいかがでしょうか。
作り方は簡単
👆材料は上記の4つを使います
水と蓮根 の絞り汁を1:1を目安に、粗塩を少々(少々とは親指と人差し指で一つまみした量、または約0.3~0.6g程度)と生姜汁(生姜を擦り下ろしたもの)を少々(量はお好みで)加えて、弱火で加熱します。
👆沸騰する前に火を消しますが鍋を回してとろみがつけばOKです
完成です。
👆甘酒のような感覚でいただきました
味は甘さが蓮根絞り汁よりは、無かったが粗塩を入れているので塩の味が効いていてコクのある風味だった。例えるなら蕎麦湯(そばゆ)に近い味だった。
まとめ
蓮根湯の方が蓮根絞り汁より、口当たりが甘酒のような感じ(味は甘酒と少し違い、蕎麦湯に近い味)で、筆者としては、蓮根湯の方が飲みやすい。飲んだ後は、喉がスッキリし、声も出しやすくなって「これは良いことを知った♪」と思った。お正月のおせち料理や家庭料理の煮しめのように、蓮根を輪切りにして煮たものに慣れていたが、そのまま擦り下ろしても生で充分、美味しくいただけると思う。
蓮根の絞り汁に、水と塩と生姜を加えて煮るだけです。秋から冬に向かう季節に、喉や咳、風邪気味などが気になるときに作られてはいかがでしょうか。